ある男との出会い
青木はイラク、アフガニスタンなどの中東地域取材を経て、
2006年からアフリカの紛争地を取材している。
希望もなく日々を過ごす人々に寄り添うようにシャッターを切ってきた。
まだ内戦下にある中央アフリカ共和国での取材中、1人の男と出会った。
その男はキリスト系民兵組織「Anti-Balaka」を束ねるカリスマリーダー、リチャード。
イスラム系武装組織「Seleka」の支配下だったこの国でキリスト教徒である彼らは迫害を受けていた。
リチャードの村も、他の地域と同じようにSelekaに襲われる。
命からがら逃げ込んだ彼は、森の中からたった1人で
この国をSelekaの支配から解放するために武器を手にし、立ち上がった。
そんなリチャードの元に仲間たちが集まり、民兵組織「Anti-Balaka」が結成され、戦い続けた。
彼らの部隊は勝利を重ね、首都バンギを含む西側エリアを解放していった。
そして首都を解放した直後に思いがけないことが起こる。
「この国の未来のために、平和のために武器を手放してほしい」
大統領からリチャードへ直々の要請が届く。
リチャードは悩んだ。
そして出した答えは、武装解除要請を受け入れ、
激しい内戦の中で彼らは静かに武器を置いた。
僕はリチャードと、「撮影者」と「被写体」という関係で出会った。
出会ったばかりの彼は全くと言っていいほど心を開いてくれることもなく、
カメラの前でも鋭い眼つきであからさまに嫌な顔を向けていた。
この国の混乱が自分たちだけの問題ではなく、
他の諸外国の利益のために続いていることを彼は知っていたからだ。
自分たちのことしか考えない、外国人に心を開くことを彼は強く拒んでいた。
それでも彼の圧倒的な魅力に惹かれ、どうしても彼を撮影したいという想いが強くなっていった。
僕が一体何を表現したいのか、何度もその想いを伝えた。
彼は次第に心を開いてくれるようになった。
僕らは「ともだち」になっていた。
そしてある日、彼は誰にも語ろうとしなかった全てを語ってくれた。
それは想像を絶する過去だった。
現在、PEACEisプロジェクトは、
平和を渇望するリチャードを中心に現地の彼らと共に内戦終結へ向けて平和活動を継続中。
PEACEis___のストーリーはまだ始まったばかり...